抄録
2型糖尿病や脂肪肝は, その発症に環境因子と遺伝素因とが関与する多因子疾患である。そこで, 食事条件と相互作用してこれらの生活習慣病を発症させる疾患感受性遺伝子の解明を目指して, 食事因子と遺伝因子とを厳密に制御できるモデル動物を用いた遺伝解析を行なった。第一に, マウスSMXA組換え近交系統群を用いて, 非糖尿病・非脂肪肝のゲノムに潜在している複数の疾患感受性遺伝子が組み合わさることによって糖尿病や脂肪肝が発症することを証明した。次に, マウス第2番染色体に高脂肪食摂取によって糖尿病形質を誘導する量的形質遺伝子座 (QTL) の存在を示し, 第12番染色体に脂肪肝発症を誘導するQTLを同定した。さらに, この脂肪肝のQTLの候補遺伝子が肝臓脂質代謝へ関与する可能性を得た。今後, 食事因子と相互作用する疾患感受性遺伝子の同定を目指して研究を進め, その疾患遺伝子の食事因子による制御機構についても研究を展開したい。