日本栄養・食糧学会誌
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総説
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」における重症化予防について
多田 紀夫
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2016 年 69 巻 3 号 p. 101-108

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抄録

このほど「日本人の食事摂取基準 (2015年版) 」が策定された。この「日本人の食事摂取基準2015年版」は, わが国の高齢化の進展や糖尿病など生活習慣病の範疇にある疾病の増加を踏まえ, 平成25年度から開始された第2次「健康日本21」に掲げられた基本概念である主要な生活習慣病の発生予防と重症化予防の徹底を視野に入れ策定されたものである。ここで述べる「重症化予防」とは, これまでの「日本人の食事摂取基準」が健康な個人または集団を対象としたのに対し, さらに予防概念の範疇を広げ, 高血圧, 脂質異常症, 糖尿病, 慢性腎臓病といった生活習慣病の発症リスクを持つ個人あるいは集団に至るまで, すなわち保健指導レベルに達した領域にある対象者を念頭におき, 好ましい食事摂取のあり方を導入するものである。そして, 疾患を有していたり, 疾患に関する高いリスクを有していたりする個人ならびに集団に対して, 治療を目的とする場合は, 食事摂取基準におけるエネルギーおよび栄養素の摂取に関する基本的な考え方を理解した上で, その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理指針を用いることとなる。このように, 「重症化予防」が図られることにより, 健常な国民から疾病を有する個人,集団までをシームレスに捉え, 食事摂取のあり方を展開することが可能となった。本稿では「重症化予防」に関わる方策と食事摂取の内容に言及する。

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