日本栄養・食糧学会誌
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総説
マグネシウムを中心としたミネラル栄養に関する基礎的研究
(令和元年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
松井 徹
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2019 年 72 巻 5 号 p. 211-219

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抄録

日本を含め先進諸国ではマグネシウム (Mg) 摂取不足が問題となっている。本稿では, われわれが行ってきたMgを中心としたミネラル栄養に関する基礎的研究を紹介する。溶解性はMg吸収に大きな影響を及ぼすが, 海藻や飲用水中Mgの吸収を検討し, 溶解しているMgの形態や消化管内滞留時間もMg吸収に影響を及ぼすことを示した。Mg欠乏は肝臓中マスト細胞数を増加させることを明らかにした。肝臓および肝臓を構成する細胞のモデル培養系を用いた代謝物の網羅的解析によって, Mg欠乏により生じる新奇な代謝異常を明らかにした。Mg欠乏時の肝臓中金属類の網羅的解析を行い, モリブデンなど8種の金属類濃度が変動することを見出した。また, Mg欠乏による肝臓中亜鉛トランスポーター (Zip14) とメタロチオネインの発現増加が肝臓中亜鉛を増加させること, Mg欠乏は鉄過剰に対するヘプシジン発現応答を抑制することによって鉄代謝を撹乱することを示した。加えて, アクチビンBやインターロイキン-1βが, ヘプシジン発現亢進を生じる分子機構を解明した。

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© 2019 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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