日本栄養・食糧学会誌
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総説
食品由来ペプチドの脳神経調節作用に関する研究
(令和2年度日本栄養・食糧学会奨励賞受賞)
水重 貴文
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2021 年 74 巻 2 号 p. 69-74

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抄録

うつ疾患, 不安障害, 認知症などの精神疾患の患者数は, 厚生労働省が指定した5大疾病の中で最も多く, 深刻な問題となっている。一方, 食品タンパク質の酵素消化により生成するペプチドや低分子オリゴペプチドの中には多彩な生理作用を示すものがある。近年, それらのペプチドの中から脳神経系に作用するものが見出されている。本研究では, 医薬品のスクリーニングに使用される動物行動学的手法により, 低分子ペプチドの中からうつ様行動, 不安様行動, 認知機能の調節に対し有効なものを見出した。構造—活性相関解析や体内動態解析により活性成分候補を特定した。また, メカニズム解析により, それらの情動調節作用には神経新生促進やモノアミン, γ-アミノ酪酸のシグナル経路活性化などが関与することが明らかになった。以上の研究成果より, 食品由来低分子ペプチドが経口投与で有効かつ強力な脳神経調節作用を有する可能性を示し, 膨大な分子種からなるペプチドと脳神経系との相互作用の一端を明らかにした。

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