日本栄養・食糧学会誌
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総説
時間生物学的アプローチによる生活習慣病予防を目指した分子栄養学研究
(令和5年度日本栄養・食糧学会学会賞受賞)
小田 裕昭
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2023 年 76 巻 6 号 p. 331-342

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抄録

栄養学は主に「何をどれだけ食べるか」について研究を行ってきた。一方, 栄養が充足される以前から人間の知恵として「規則正しい食生活は健康に秘訣だ」と考えられてきた。体のすべての細胞がその時計システムを備えており, 時計遺伝子による生物時計の制御機構が明らかとなった。さらに体内時計が食事により同調を受けることがわかり, 食事のタイミングは, 多くの代謝リズムを制御している。そして, 不規則な食生活をすると, 脂質代謝異常を誘発して, 肥満やメタボリックシンドロームなどに結びつくことがわかった。食事のタイミングによって形成される体内時計は個人の「体質」である。概日リズムをはじめとするさまざまな生体リズムの総体をリズモーム (rhythmome) としてとらえると, 健康を維持するため個人化対応した栄養学 (「プレシジョン栄養学」) の基盤データとしてとらえることが可能になる。時間栄養学を考えることにより, メタボリックシンドロームや生活習慣病, ロコモティブシンドロームを予防することが期待できる。

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