2023 年 76 巻 6 号 p. 371-376
褥瘡の予防や管理対策の整備は重要な課題である。褥瘡は寝たきり高齢者に頻発する病態であり, 局部に一定の圧力が持続的に加わることで組織が壊死し, 一般的に床ずれと呼ばれる皮膚潰瘍が形成される。褥瘡の発生と治癒遅延には栄養障害が根底にあり, 食の改善が必要不可欠である。褥瘡の治癒は特にタンパク質栄養と密接に関連しているが, 基礎研究のエビデンスは多くはない。また, 高齢者や入院患者は食欲不振等により食事の摂取量が低下しているため, 食事の「質」に着目したアプローチが重要である。筆者はこれまでに, アミノ酸スコアの低い小麦グルテンを摂取した創傷モデルラットでは, コラーゲン沈着が減少し, 治癒の遅延が引き起こされることを明らかにした。本研究成果をもとにした栄養療法は褥瘡患者にとって効果的な治療戦略の一つであり, 早期に適切な栄養ケアを行い, 合併症の減少とともに入院日数を減らすことは医療経済的にも重要である。