糖尿病, 肥満, 高血圧などの生活習慣病は, 多様な合併症により寿命と健康寿命を短縮する。その発症と重症化には遺伝と生活習慣の両方が関与するため, 対策には, 人種や国ごとの大規模データに基づく科学的エビデンスが必須である。筆者らは様々な日本人大規模データ解析により, 肥満度と糖尿病との複雑な関連, 特に肥満が僅かであっても糖尿病発症リスクになること, 高齢糖尿病患者においてはやせが死亡率を高める一方, 中年肥満糖尿病患者においては, 体重減少が糖尿病寛解に寄与することなどを明らかにした。また, 糖尿病食事療法の観点からは, 炭水化物やタンパク質の摂取比率, 食塩, 野菜・果物, 食物繊維の摂取などと糖尿病合併症リスクとの関連を解明し, 運動療法との併用やICT技術の活用も含め, それらエビデンスの現場応用の有効性なども示した。このような栄養疫学エビデンスに基づく取り組みが, 将来のより効果的な食事療法につながることが期待される。