日本栄養・食糧学会誌
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研究ノート
パルミチン酸はU937細胞においてタモキシフェン誘導性アポトーシスを阻害する
横山 嘉子斎藤 楓加治 和彦岩崎 有希久保 宏隆白石 弘美加納 和孝
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2024 年 77 巻 6 号 p. 431-438

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抄録

タモキシフェン (TAM) はエストロゲン感受性乳癌の治療に汎用されるが, 白血球など他細胞においてもアポトーシスを誘導し, 細胞数を減少させる。本研究では, TAMの細胞毒性と生体成分である脂質の影響に焦点を当て, ヒト単球白血病細胞 (U937細胞) を用いて, 飽和脂肪酸であるパルミチン酸 (PA) の影響を検討した。DEVDase活性, 核の凝集・断片化を調べた結果, TAMはU937細胞にアポトーシスを誘導する一方で, PAによってその効果が顕著に阻害されることが明らかになった。対照的に, オレイン酸 (OA) ではこの阻害作用は弱かった。17β-エストラジオール (E2) はTAMによるアポトーシスに影響せず, 自身もアポトーシスを誘導しなかった。ミトコンドリアを用いた解析では, PAがTAMによる呼吸鎖複合体 (I, II) (CI, II) の活性阻害を解除することが示された。これらの結果から, PAが, TAMに引き起こされるエストロゲン受容体 (ER) 非依存性の細胞毒性を軽減する可能性が示唆された。

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© 2024 公益社団法人 日本栄養・食糧学会
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