2025 年 78 巻 5 号 p. 275-281
疫学研究および動物実験から高い塩分にもかかわらず味噌の摂取は血圧を上昇させず, 肥満防止等の代謝異常改善作用があることが示されている。最近, 味噌・醤油中に通常の短鎖ペプチドの他, アミノ末端のAsp残基がL/D-α/β型となった異性化ペプチド, アミノ基を持たないピログルタミルペプチド, 環状ジペプチドであるジケトピペラジンの存在が見出された。味噌の水抽出物をラットに投与したところ, 通常のペプチドは小腸管腔内でも血中でも有意に増加しなかったが, いくつかの修飾ペプチドは管腔内のみならず, 血中でも有意に増加した。pyroGlu-Leuは回腸からのホスト抗菌ペプチドの分泌を増加させ高脂肪食誘発の腸内細菌叢の乱れを改善し, 高脂肪食誘発の肥満も抑制した。また血中で増加した修飾ペプチドはアンジオテンシン転換酵素1を阻害した。これらの生体利用能の高い修飾ペプチドの機能が味噌の有益な機能を担っていることが示唆される。