抄録
小麦グルテンおよび大豆グリシニンを加熱処理 (1.05kg/cmcm2 30分間オートクレープした) したものと, しないものを基質としてパンクレアチン (以下P) 乃至プロナーゼ (以下S) の両蛋白分解酵素でin vitroで消化し, 両蛋白質の消化性の差異を18種アミノ酸の遊離度の経時的変化 (1, 2, 4, 6, 24時間) の面から観察した。アミノ酸の定量は微生物法を用い, 各基質の24時間消化物については諸形態N量も測定した。また, 熱処理しないものの4および24時間消化物について2次元ペーパークロマトグラフィで定性的な観察を行なった。
その結果, 18種遊離アミノ酸の総和量および各態Nの遊離度で, 両蛋白質の消化性を比較すると, P消化物の熱処理しないものではほぼ一致するが, 熱処理物ではグリシニンの方が高く, S消化物では熱処理の有無に関せずグリシニンの方が高い。熱処理によってグリシニンのP消化ではその消化性は高まり, そのS消化およびグルテンのP, S消化では低下する。個々のアミノ酸については (表2), 蛋白の種類, 熱処理の有無および酵素の種類で, それぞれ遊離化の様相を異にする。ペーパークロマトグラフィでの観察でも, ほぼ同様な傾向が認められる。両蛋白質の24時間消化物ではGlu-NH2, Asp-NH2がそれぞれ若干観察される (図1)。