栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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小麦蛋白質に対するDリジン補足の栄養化学的研究
中村 延生蔵西 宏秋場 克彦八下田 幸雄横塚 博夫
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1966 年 19 巻 3 号 p. 186-190

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抄録

基本飼料として, 小麦粉を主成分とする飼料 (蛋白質8.2%) と, これにグルーテンを添加して蛋白質を15.0%とした飼料を用い, これにそれぞれ, L, DLおよびDリジンを補足し, 幼白鼠の成長, 尿中窒素成分および尿の塩基性アミノ酸 (遊離および結合型をふくむ) 等を分析した。
1. Dリジンは蛋白質摂取水準のいかんにかかわらず成長に全く影響を与えなかった。
2. 小麦粉食にDLリジンを補足した群は尿中アミノ窒素の排泄が高まった。Dリジンを補足した群もアミノ窒素の排泄が増大する傾向はみられるが, DLリジン補足の群ほど顕著でなかった。小麦粉食にLリジンを補足した群のアラントイン窒素の尿の全窒素に対する比率は最も高かった。このことは, 低蛋白質食では摂取蛋白質の栄養価が高まるにともないアラントインの比率が高まることを示している。
3. 尿へ排泄されるリジンの量は, DLまたはDリジンを補足したすべての群を通じ, 与えたDリジンの約1/5ないし1/3であった。また, Dリジン摂取により未確認物質ではあるがリジン以外のニンヒドリン発色物質が, かなり多量に尿に排泄されることが明らかとなった。したがって, Dリジンはかなりの部分が体内で分解され, 窒素代謝過程にある種の影響を与えていると考えられる。さらにこの物質はDリジンを与えた群よりDLリジンを与えた群の方が多いようである。尿へのリジン排泄についても, 小麦粉食区の場合には同じ傾向があるようにみられる。これは, DLリジン補足により, ある程度Lリジンの必要がみたされている場合とLリジンが全く不足している場合とで, Dリジンの代謝にも若干の変化があることを予測させるように思われる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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