1970 年 23 巻 2 号 p. 119-122
以上の結果はメチオニン欠乏によって筋肉蛋白質にわずかな変動がおきていることを示しているが, メチオニンに差がなくむしろトリプトファンがやや減少することは前報2)のトリプトファン欠乏の結果に類似している。
筋肉蛋白質諸分画中, 機能的にことなるサルコプラスマ, ミオフイブリルおよびストロマは食餌条件によって代謝性もことなることは考えられることである。 最近, Cardiら15)は蛋白欠乏のシロネズミ筋肉中サルコプラスマ中のイソロイシン, ロイシン, リジンおよびトリプトファンが減少し, いっぽうミナシン中のアミノ酸含量は変化がないと報告しており, 本実験の結果と矛盾していない。 著者ら16) 17)は必須アミノ酸欠乏時の肝臓蛋白質量は等カロリーの条件下では蛋白欠乏に見られるような易動性蛋白質の顕著な減少がみられないことを明らかにしたが, このような傾向が筋肉においてもおこるのではないかと考えられる。
なお前述のように酸化カゼインに対する♀の特異的な感応を観察したが, これに関連してエチオニンの障害やメチオニン欠乏による臓器の病理的変化や脂肪肝発生に対する♀の特異性についてFarberら18)の報告があり興味ある事実である。