栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
貝類外套膜外液の生化学的研究 (第二報)
アサリ諸成分の周年変化について
石原 忠保田 正人高本 健一
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1970 年 23 巻 3 号 p. 164-168

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抄録
アサリを肉質部と外液部にわけて有機酸ならびに諸成分 (水分, 窒素化合物, リン化合物) の含量とアルカリ性ボスファターゼ, 酸性ホスファターゼ活性の周年変化を調べた。
1. 各部位重量の季節的変動は2~5月は肉質部が外液部より多く, 6, 7月は肉質部と外液部のしめる割合はほぼ等しく, それ以後, 特に10月下旬より12月にかけては外液部のしめる割合が多くなる。
2. 窒素化合物は各月の変動が著しいが, 肉質部の可溶性総窒素, 外液の総窒素はおおむね生殖巣の発達の時期に高い含有量を示した。
3. 肉質部, 外液部とも無機リンは周年あまり変化はなく, 総リンおよび酸溶性リンは環境水温の高い夏季に多く, 冬季には少ない。また春季にも高くなるがこれは生殖巣の発達による影響と考えられる。
4. 肉質部のコハク酸含量は12月に最低の, 12mg%, 9月下旬に最高の97mg%を示しかなりの差はあるが, 他の月はおおむね20~50mg%であった。
5. 外液中のコハク酸は一般に非常に少なく, 0~8mg%であるが6月に一度120mg%を検出した。これは季節的変動と考えられずむしろ急激な環境変異などによる異常代謝の結果と想像される。
6. 内臓部のアルカリ性および酸性ホスファターゼと外液のアルカリ性ホスファターゼは一般に夏季に低く, 12月から, 5, 6月にかけて高くなる。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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