栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
グルコース, フラクトース負荷による血中成分の変化
平沢 芙美子下垣 玲子時田 昭枝小池 五郎吉川 春寿
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1971 年 24 巻 7 号 p. 405-409

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抄録
フラクトースの人体内の代謝をグルコースのそれと比較する目的で, 19~26歳の女性に一時に体重1kg当り1gのフラクトース, またはグルコースを経口投与したときに血清中グルコース, フラクトース, 乳酸, ピルビン酸, 無機リン酸濃度が時間的 (負荷後40分, 90分, 120分) にどのような変化を示すかについて実験を行なった。
実験は二回行なったが, 二回の実験の被検者の状態の差 (食事後2~3時間後の負荷と空腹時負荷) によってグルコース濃度や無機リン酸濃度の時間的変化に差を生じた。
しかし二回の実験ともフラクトース負荷の場合はグルコース負荷の場合に比べて血清中フラクトース濃度, 乳酸濃度, ピルビン酸濃度において最高2倍程度の時間的上昇を示し, 120分値でももとの値にもどらなかった。また無機リン酸濃度はフラクトース負荷, グルコース負荷ともにわずかな減少がみられた。グルコース濃度はグルコース負荷はもとよりフラクトース負荷でも明らかな上昇がみられた。
以上の結果から本実験の場合フラクトースは比較的速く吸収され, その一部はフラクトースのまま血液中に入り代謝されるが, 一部はグルコースにも変換すると考えられる。またフラクトース負荷の場合に乳酸, ピルビン酸が非常に大きな上昇を示すのは, 腸から吸収されたフラクトースのかなりの部分は門脈血液中にはいり, 肝臓においてグルコースとは異なる代謝経路によって処理されるのであろうということを示唆している。グルコースはGlucose-6-phosphateを経てグリコーゲン合成, あるいは解糖過程によって代謝され, そこに相応の代謝調節機構が働いているのに対してフラクトースの代謝は主にFructose-1-phosphateおよびC3化合物を経て解糖過程の後半に合流するのでピルビン酸および乳酸が増量しやすいのではないかと考えられる。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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