以上私は臨床家の立場から, 食欲不振の実態とその対策の2, 3についてのべた。
(1) 食欲不振は多くの病気に伴う症状で, 入院および外来患者にかなり多くみられる。食欲不振をおこす疾患で最も多いのは胃疾患である。
(2) 入院患者で病院給食に多くの減食がでるが, その原因として最も多いのは食欲不振である。ただし治療食のうち糖尿病食は減食が著しく少ない。
(3) 食欲不振は精神的影響をうけやすく, 不定愁訴症候群や仮面うつ病のなかにも食欲不振を訴えるものが多い。 これらは適切な精神科的な治療によりよく改善される。
(4) 食欲不振の対策のひとつとして香辛料の利用がある。 香辛料の適量は食欲を亢進させ, また腎, 肝疾患などにも食欲亢進剤として有益無害に利用しうる。
(5) 脱Na粉乳, 植物油, 可溶性でん粉を主成分としたPetersらの処方に準じた混合栄養剤ML722を調製して, これをあたかも薬剤のごとくにみたてて投与するという方法を試みた。 この方法により肝硬変症その他の患者に与えて熱量の増加, N出納の改善がみられた。
(6) アミノ酸混合液をできるだけ人乳のアミノ酸パターンに近くして, 輸液として与えた。 このアミノ酸混合液投与が十分に利用されることを臨床的に種々の面から検討した。
(7) さらにシロネズミを用いて, このアミノ酸混合液がアルブミン合成に十分利用されることを, C
14重曹を用いて証明した。
(8) 食欲不振時にビタミン剤補給の合理性について論じた。
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