抄録
りんご果肉より, 水に可溶性のペクチナーゼ阻害因子と, 組織に結合されたタイプの阻害因子を分離し, 後者についてその化学的性状および阻害機構を追究した。
(1) 本阻害因子は非透析性の熱に対して安定な物質であり, 75%エチルアルコールあるいはペクチナーゼ製剤で処理することによって, 果肉組織から溶出される。
(2) この阻害因子はペクチナーゼと結合して, それを沈殿せしめる作用を有する。それらの反応様式から, 本因子の阻害機構を追究した。
(3) 本因子はゼラチン, ナイロン粉末, ハイドバウダーなどと結合する性質があり, この反応性を利用することによって, その阻害を防止することが可能である。
りんごのポリフェノールオキシダーゼを用いて, クロロゲン酸を酸化重合せしめたものも, これと同様の性質が認められる。また, 両者の紫外部, 可視吸収スペクトルはよく似たパターンを示す。
(4) 本因子はタンニン酸とほぼ同程度の阻害を示す。クロロゲン酸酸化重合物はより顕著な阻害効果を示すが, クロロゲン酸自体には, ペクチナーゼ阻害作用は全くみられない。