抄録
われわれは生体試料中のヨウ素定量法の確立を目的として本研究を行なった。試料はZakらの塩素酸試薬で分解したが, 分解管として内径16mm, 長さ90mmの試験管を用い, アルミニウムブロック中で190~195℃まで加熱した。分解管はそのまま比色定量に用い, 分解溶液中のヨウ素を硫酸第二セリウムアンモニウム亜ヒ酸に作用させ, その接触反応による退色程度を, 360mμで測定した。比色定量の試薬は, RodgersらおよびBenottiらに基づいたが, 塩化ナトリウム試薬を用い, 組成を変えてみたところ, 0~90mγまでほぼ直線を示す検量線を得た。共存イオンの影響は, Sandellらが詳細に報告しているので, 生体内に含まれるその他のイオンについて検討したところ, 生体試料中に含まれる程度の量では, ほとんど影響がなかった。この方法を, 血清, 尿, 甲状腺, 飼料および糞に適用し, ヨウ素の回収実験を実施し, 回収率94.7~106.9%, 相対標準偏差は±3%であった。以上の結果から, 本法は既往の方法より分析時間が短縮され, 定量範囲, 精度についても好結果が得られるので, 生体試料中のヨウ素定量に適用できる。