栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
トマト果実の樹上成熟および追熟中における脂質含量の変化とその相違
果実そ菜における含有脂質とその役割に関する研究 (第6報)
南出 隆久緒方 邦安
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1972 年 25 巻 4 号 p. 333-338

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抄録

トマト果実の含有脂質とその役割に関する研究の一環として今回は, 果実を樹上で成熟させたものと, breaker (催色期) の時期に収穫し, 20℃下で追熟, 貯蔵させたものとで, 脂質含量ならびにその組成がどのような消長を示し, どのような相違を示すかについてリン脂質を中心に比較検討した。
(1) カロチノイド類, 全酸量, 糖度などは, 樹上成熟果のものが高い値を示したが, クロロフィル, 硬度は, 樹上成熟果, 追熟果では明らかな相違はみられなかった。
(2) トマト果実の脂質として, 中性脂質, リン脂質, 糖脂質などが存在する。成熟に伴う脂質含量の変化は, 樹上成熟では総脂質は増加し, リン脂質はほとんど変化しないが, 貯蔵, 追熟した果実では総脂質, リン脂質ともに減少する傾向がみられた。また, リン脂質のうち, おもなph. choline, ph. ethanolamine, ph. inositolの含量変化を調べてみたところ, 樹上成熟果では三者ともほとんど変化なく, 大体一定であった。一方, 追熟果では, ph. choline. ph. inositolが減少し, ph. ethanolamineが逆に増加することが認められた。
(3) 総脂質の構成脂肪酸においては, 樹上成熟果, および追熟果とも, 成熟, 追熟が進むにつれて不飽和脂肪酸が増加したが, リン脂質の脂肪酸組成は, ph. ethanolamine, ph. cholineでみられたように, 樹上成熟果では不飽和脂肪酸が増加するのに対し, 貯蔵追熟果では不飽和脂肪酸が顕著に減少することが認められた。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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