抄録
穀類, いも類, 種実類, 豆類から抽出した脂質とオリーブ油, 綿実油の不鹸化物中のステロール量を第1報と同様にβ-シトステロール相当量としてあらわした。遊離型およびエステル型ステロールの比は, シリカゲルカラムを用いて第1報と同様に求めた。また不鹸化物の薄層クロマトグラフィーを行ない, ステロール部分をガスクロマトグラフィーにかけた。
1) 脂質1g中のステロール量は穀類では40~80mg, いも類では約100mg, 種実類ではくりの54mgを除いては15mg以下で, とくにくるみでは2mg以下と少なかった。豆類ではだいずの8mg, りょくとうの14mgを除いては40~75mgであった。オリーブ油と綿実油では5, 6mgであった。
2) 100gあたりのステロール量は脂質含量の高いこめぬか, ごま, ひまわりの実では500mg以上もあり, とくにこめぬかは1300mgと高かった。いも類は水分含量の高いために200mg以下であり, 豆類の中ではだいずが160mgで最も高かった。
3) 遊離型とエステル型ステロールの割合は穀類とひまわりの実を除いては遊離型ステロールが多かった。ガスクロマトグラフィーでの分析の結果, β-シトステロールとキャンペステロールは今回のいずれの試料にも含まれていた。スチグマステロールは小麦, ぎんなん, くるみ, なたね, オリーブ油, 綿実油には見出されず, β-シトステロールはあずきとささげにスチグマステロールと同程度に含まれている以外にはいずれの試料にも最も多く含まれていた。なたねにはブラシカステロールが同定された。コレステロールと推定されるピークがじゃがいも, ささげに見出されたほか, 小麦, らっかせい, えんどう, だいず, りょくとうにも僅少ではあるが見出され, コレステロールは量的には少ないが植物界にも広く分布しているのではないかと思われる。ステロール組成を見るためには今回のように薄層クロマトグラフィーとガスクロマトグラフィーの併用によることが, ステロール以外のピークがあらわれなくてよいことがわかった。
4) 植物の脂質には固有のステロール組成があることから, 市販の食用油の原料の推定に利用できる可能性が示唆された。