栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
米胚芽γグロブリンの熱変性
堀越 昌子上杉 外勢林 宏子森田 雄平
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1972 年 25 巻 7 号 p. 561-564

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抄録

1) 米胚芽γグロブリン溶液の粘度は80℃ 30分間の加熱処理で急激に増加し, 1.5%以上の濃度では一部不溶化する。100℃加熱処理では, γグロブリン溶液は不可逆的なゲル化をおこす。
2) γグロブリンの分子内部のSH基は, 80℃加熱処理で急速に分子表面にあらわれる。その反応は最初の10分間で85%まですすみ, あとの15%はその後の20分間で分子表面にあらわれる。
3) γグロブリンの尿素変性では, 分子内のSH基は尿素濃度6Mで最初の3分間に, 8M濃度では1分間に分子表面に現われ, その後徐々に減少する。加熱変性の場合と比べると分子表面にあらわれるSH基数は最大限で約半数であり尿素を除いたあとのSH基は減少する。
4) カルシウムイオンが存在すると, γグロブリン溶液の粘度は, 70℃ 30分間加熱処理で顕著に上昇する。カルシウムイオンは多いほど粘度上昇は著しく, 1, 10mMカルシウム濃度で80℃に加熱すると一部不溶化し, 100mMの濃度ではゲル化を起こす。
5) カルシウムイオンが存在するときのγグロブリン内部のSH基は, 70℃加熱処理で分子表面にあらわれる。これはカルシウムイオンがないときの80℃加熱処理にほぼ相当する。カルシウムイオン存在下の80℃加熱では最初の3分間で急速にSH基が分子表面にあらわれ, それ以上の加熱では一部不溶化する。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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