抄録
各地域集団を, 鉄分代謝の面からみた場合, その地域集団の鉄分吸収量にみあった体内鉄含量が期待される。血清鉄およびヘモグロビン含量は, 体内鉄含量を反映するので, これらの値になんらかの地域差が存在することが考えられる。ここでは, 各地域の男女の血清鉄含量, およびヘモグロビン含量を比較することにより, 体内鉄含量の地域差を検討してみた。その結果, 以下の結論を得た。
1) 各地域の男女の血清鉄含量の平均値の間には, 有意な相関がある。
2) ヘモグロビン含量についても同様に有意な相関がある。
3) 集団内においては, 閉経期前 (ここでは, 一応45歳未満とした) の夫婦の血清鉄含量について, 有意な相関が認められる。
4) 鉄分吸収に影響する要因の摂取量と, 血清鉄含量の関係を, 閉経期前の女性について検討してみた。鉄分吸収に影響する要因として, 鉄分・動物たん白質・ビタミンCをとり, これらの摂取量, および摂取量の組合せと, 血清鉄含量との相関をみてみた。動物たん白質の摂取量が第一要因として血清鉄含量に作用し, それに第二要因の鉄分摂取量を組み合わせたものが, もっとも強い相関を与えることがわかった。