栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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グリセリン脂肪酸エステル配合剤による米飯の変敗防止効果
毛利 善一西沢 一徳葛見 衛
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1975 年 28 巻 5 号 p. 263-269

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抄録

グリセリンカプリル酸エステルおよびそれを含む配合剤 (すべて食品添加物からなる) による市販電子ジャー中の米飯変敗防止効果について検討し, 以下の結果を得た。
1) 電子ジャー内容器面には無数の凹凸が認められ, その中には変敗原因菌が十分潜入できるくらいの孔もあり, 洗浄による除菌作用のみでは, これらの菌を完全に除去できず, 変敗防止効果は不十分であった。
2) 変敗米飯より分離した細菌に対する抗菌効果は, グリセリンカプリル酸エステル単独よりも, それとショ糖脂肪酸エステル, ピロリン酸カリウムなどを配合した配合剤のほうが優れていた。
3) 分離菌に対する配合剤の抗菌力は, デンプン共存下ではデンプン非共存下の50分の1に低下した。また, 温度を55℃から70℃に上昇することによって抗菌力は増大した。
4) 米飯の変敗臭がかなり弱い間は, 変敗原因菌数と変敗臭との間に比例関係が認められたが, 菌数が105台に増殖すると, 変敗臭の強度との相関性が見られなくなった。すなわち, ごくわずかでも変敗臭がすれば菌数は105台に増殖していることを認めた。
5) 電子ジャーへの入飯試験の結果, グリセリンカプリル酸エステルを含む配合剤を内容器内壁に最低25mg付着残存させることにより, 変敗臭を著しく減少させることが可能であることを認めた。
6) 本配合剤の米飯の味におよぼす影響について検討したが, とくに問題はなかった。
7) 以上のことより, 電子ジャー中の保存米飯の変敗防止に, グリセリンカプリル酸エステルを含む配合剤を入飯前にあらかじめ内容器内壁に塗布あるいは噴霧する使い方をすれば, 十分効果を発揮できることと思われる。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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