抄録
アミノ酸輸液時の生体内アミノ酸利用率を検討するため, 健常成人および各種内科疾患患者に15N-グリシンを静注し, 15N-アミノ酸の血中消失曲線より消失係数 (K値) を求めた。次に15N-グリシンに各種アミノ酸輸液を混じて投与しK値を得た。
1) 15N-グリシン単独投与の場合, K値は健常若年者 (7例) 0.0350±0.0036, 健常高年者 (6例) 0.0309±0.0039で高年者は若年者に比べ有意の低下を示し, 高年者ではアミノ酸利用の低下がうかがわれた。K値は肝硬変症例では低下し, 肝性昏睡例ではさらに低下する。甲状腺機能低下症例でも低下を示したが, 治療により病状の改善とともに上昇した。痛風例では上昇例と低下例があり病型との関連を示唆し, ネフローゼ症候群例では上昇を示しアミノ酸利用の亢進がうかがわれる。
2) 15N-グリシンにグルコースまたはキシリトールを加えると, K値は高くなる。グリシンまたはリジンを加えると前者は低下, 後者は上昇を示した。
3) 15N-グリシンにアミノ酸輸液を混じて静注するとK値は人乳中のアミノ酸組成に準じキシリトール付加のP-X液の場合は高値を示し, 効率よく組織にとりこまれることが推察された。