栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
ジャガイモ生でんぷんのラット消化管内における消化過程
多田 洋河合 文雄
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1977 年 30 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

ジャガイモ生でんぷんのラットにおける消化過程を明らかにする目的で, ラット消化管各部から回収したでんぷん粒の化学的, 顕微鏡的性質を調べた。ラット胃から回収したでんぷん粒は, 無処理のものと比較して明らかに消化性が高くなっており, また傷がついた粒が多数観察された。このように, 胃でジャガイモでんぷんに傷をつけ, 消化されやすい形にしている要因としては, 胃液の塩酸単独の作用ではなく, だ液アミラーゼと胃液の塩酸の相乗的な作用が働いていることが明らかになり, 今まで炭水化物の消化にはあまり関係がないと思われていた胃が, 重要な役割を果たしていることが明らかになった。
これらの結果考えられるジヤガイモ生でんぷんのラット消化管における消化過程は, 次のとおりである。 (1) 口腔でだ液と混ぜられ, 胃に送られ, 胃液の塩酸と混ぜられる。このとき, その具体的な機構は明らかではないが, だ液アミラーゼと塩酸の相乗作用により傷をつけられる粒が多数生じる。 (2) 小腸を下るにつれて, その傷を中心に消化酵素によってえぐられ, 粒の内部構造のほうが外層部より酵素に対する抵抗性が弱いので, 内側からえぐられ中空になり, 断片になるものが増加し, 消化されてしまう。 (3) 胃で傷を受けなかったものは消化途中の形で排泄されるものもかなりある。 (4) 盲腸, 大腸では小腸におけるでんぷんの消化過程のタイプとはまったく別のそれまでの傷に付加的に小さい穴が多数あけられたものが観察されるが, その原因や意義について確かなことはわからない。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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