栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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熱重合油の毒性発生機構に関する病理組織学的研究 (急性毒性) (2)
斎藤 衛郎福井 良弘星野 忠彦金田 尚志
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1978 年 31 巻 2 号 p. 135-141

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抄録

1) 熱重合油の有毒成分であるCy. FAの急性毒性の程度を知るため, 熱重合アマニ油からCy. FAを調製し, 経口投与によるLD50値を求めたところ, 9.84g/kgmouse, 33.35mmol/kg mouseで, リノール酸メチルヒドロペルオキシドと同程度の毒性を示した。
2) Cy. FAによる急性毒性を病理組織学的に検討し, 肝臓, 肺臓, 腎臓, 大脳に病理学的変化をみとめた。こうした変化のうち, 肝臓のび漫性脂肪化, 肝細胞の萎縮, 壊死像等はCy. FAによる中毒性の肝細胞の直接的な障害像と考えられた。同時にうっ血像がみとめられたが, これは二次的なショックに伴う循環障害の現われと解された。一方, 肝臓以外の臓器にみられた変化は, 肺臓のうっ血と出血, 大脳皮質の神経細胞の壊死, 腎臓の遠位尿細管管腔や上皮細胞の変性などから成るが, おもに二次的なショックに起因する非特異的な循環障害の結果と考えられ, Cy. FAの投与に特異的な組織障害像とはいえない。
3) 以上のことから, Cy. FAによる急性毒性は, Cy. FAの投与に起因した直接的な中毒性の肝障害とCy. FAをストレッサーとする二次的なショックに伴う主として阻血性の臓器障害によると推察された。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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