栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
ISSN-L : 0021-5376
ラット肝初代培養細胞を用いた培地アミノ酸の代謝的研究
岸 恭一藤田 美明田中 啓二市原 明
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1978 年 31 巻 6 号 p. 571-577

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抄録
成熟ネズミ肝細胞をコラゲナーゼで分散し, アミノ酸の豊富なWilliams培地E (WE培地) と塩類溶液のみのHanks液で初代培養し, 培地アミノ酸の変化を測定した。さらに各種ホルモンの影響を検討した。
細胞のたん白合成が高いWE培地で24時間培養したときにはアラニン, グリシン, アルギニン, アスパラギン酸は非常に培地から減少した。またグルカゴン添加によってアラニン, グリシンの減少は明らかに促進した。これに次いでリジン, チロジン, フェニルアラニン, メチオニン, スレオニンが中程度に減少し, ホルモンとしてはデキサメサゾンによるチロジンの減少が著明であった。これに反しロイシン, グルタミン酸, イソロイシン, プロリン, ヒスチジン濃度はほとんど培養中変わらなかった。セリン, オルニチン, バリンはむしろ増加した。
次にたん白分解の方向に細胞機能が傾いているHanks液での20時間の培養では大部分の放出アミノ酸パターンは肝たん白質のアミノ酸組成によく一致したが, アラニン, アスパラギン酸, プロリン, グルタミン酸, アルギニンには放出が少なく, セリンは肝たん白質中のそれより多かった。この結果は明らかにHanks液中では肝細胞はたん白崩壊のほうに傾いていることを示しているが, 両培地での各アミノ酸濃度の変化の特異性はそれぞれ糖新生, 尿素形成, グリシン-セリン相互転換等の肝アミノ酸代謝活性とそれに及ぼすホルモンの影響で説明しうる。またこのことは逆にこの培養細胞が肝機能を研究するよい材料になることを示している。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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