抄録
米糠, 小麦胚芽, ミツバ種子よりイオン交換クロマトグラフィー, 活性アルミナカラムクロマトグラフィー, および高圧濾紙電気泳動によって結合型B6を単離した。微生物定量法より求めた結合型B6の回収率から逆算して, 今回単離した化合物が穀・種実中のB6の主要な存在形態の一つであると判断した。この結合型B6はβ-グルコシダーゼの作用によってほぼ等モル量のPINを生成し, さらに酸加水分解, NaBH4還元, TMS誘導体へ転換の後, ガスクロマトグラフ分析によって等モルずつのPINとグルコースとから成ることが判明した。
PIN-β-GをB6欠乏ラットに与え肝臓および血球におけるGOTとシスタチオナーゼの活性に対する影響を調べると, 経口投与の場合PINと同等の栄養効果を発揮することが確かめられた。しかし尾静脈より注入した場合, PIN-β-Gの効果はPINに及ばなかった。
以上の結果, 穀・種実に広く存在する主要な結合型B6の一部はPIN-β-Gであり, 食飼料成分として消化管内に取り入れられたPIN-β-Gの多くは腸内において水解作用をうけたのち吸収されると推論した。