栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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たん白質栄養および群居飼育がラットの成長と寿命におよぼす影響
梶本 雅俊中川 一郎名取 靖郎
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1979 年 32 巻 2 号 p. 123-134

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抄録

ラットにおけるたん白質栄養および個別と群居の長期影響を自然死するまで種々の生理, 生化学的指標を用いて観察した。
実験I: 長期飼育におけるたん白摂取レベル (10, 18, 27, 36%カゼイン食) の影響実験II: たん白摂取レベル (10, 27%) と個別と群居 (1ケージあたり1匹と6匹) の影響
実験III: たん白摂取レベル (10, 27%) および加齢 (14, 20, 50週齢) の肝酵素活性に及ぼす影響以上の三つの実験を行ない以下の結論を得た。
1) 成長期においては10%たん白食群の成長が最も悪く, 27%群が最も良好であったが, 生後20週以後は差が小さくなった。
2) たん白効率は雄がよかった。
3) 生存曲線を描いて評価すると, 低たん白レベル (10%カゼイン) にくらべて高たん白レベル (18%, 27%および36%カゼイン) で飼育したほうが長命の傾向があることが明らかになった。ただし各群における最長生存日数には差がなかった。また個別および群居飼育間の差は認められなかった。
4) 死亡時の肉眼的病理所見は大部分は肺炎の履歴があり27%, 36%たん白群に乳腺腫や脳下垂体異常が多く見られた。
5) 群居の影響は雄の成長期に27%個別群が27%群居群より成長がよく, 雌の10%群居群の摂取量が10%個別群のそれよりも少なく成長が悪かった。27%群居群は27%個別群より早期に乳線腫の発生が見られた。
6) 加齢に伴ってγグロブリンの上昇が見られA/G比の低下が著明であった。
7) 血清アルカリ性ホスファターゼ活性値は加齢にともなって低下し, 主として小腸由来のものであった。
8) 雌ラットにおける肝ヒスチダーゼ活性の高たん白食による酵素誘導能は加齢にともなって低下したが, カタラーゼ, ATPアーゼ, アルカリ性ホスファターゼ活性は年齢, 性別, たん白レベルのいかんにかかわらず, ほぼ一定であった。これら酵素の活性を測定することによってラットの平均余命を推測できるというRossの主張は支持できない。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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