栄養と食糧
Online ISSN : 1883-8863
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白ネズミ消化管に及ぼすプルランならびにセルロースの影響
奥 恒行山田 和彦細谷 憲政
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1979 年 32 巻 4 号 p. 235-241

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抄録

Wistar系幼若雄白ネズミ (体重約50g) に5, 10, 20, 40%にプルランを含む飼料ならびに20, 40%にセルロースを含む飼料を投与して, 白ネズミの成長曲線ならびに各臓器に対する影響, さらに小腸粘膜の糖質分解酵素におよぼす影響などを観察した。
1) プルランを20%ならびに40%に含む飼料で飼育した場合には, 著しい成長抑制が観察された。40%セルロース投与群においても同様の成長抑制がみられた。しかしながら, 抑制の程度ならびに抑制の現われ方はプルラン投与群とセルロース投与群との間に多少の差異があった。
2) 大量のプルラン (20%, 40%プルラン飼料) を長期間投与すると胃, 小腸, 盲腸, 大腸の肥大する傾向が観察された。その影響は, とくに盲腸に対して著しかった。セルロースを投与した場合には大腸に肥大が著しかった。消化管の肥大の部位と程度は, 飼料中のプルランまたはセルロース含量と飼育期間によって異なっていた。消化管以外の臓器に対してはプルランならびにセルロースの影響はほとんど観察されなかった。
3) 小腸粘膜のマルターゼ, シュクラーゼ, イソマルターゼ活性は, いずれもプルランならびにセルロースの投与によって影響されなかった。プルランは試験管内において小腸粘膜に存在する酵素によって部分分解された。
4) プルランを胃内に投与した場合に, 60分間でプルランのグリコシド結合の約3%が消化管内で加水分解された。この量はプルラン分子中に含まれるマルトテトロースユニットの量に一致していた。
以上の結果, プルランは腸管内で二糖類または単糖類まで分解されにくく, 生体に利用されにくい多糖類と思われる。セルロースならびにプルランのような生体で利用されにくい多糖類を, 白ネズミに大量に投与すると盲腸, 大腸が肥大する。これは生体がそれらの物質になじむための一種の生理的な適応現象ではないかと考える。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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