1980 年 33 巻 2 号 p. 67-73
食物の脳機能に及ぼす影響を研究する一方法として, 脳内セロトニン (5-HT) を指標としてとりあげ, アミノ酸混合物含有飼料投与のラット脳5-HTに及ぼす影響を検討した。
アミノ酸混合食群と比較すると, 絶食群では血清総Tryは低くなったが遊離Try, 脳Try・5-HIAAに変化はなく, 脳5-HTは高くなった。無たん白食群では, 血清総・遊離Tryともに低下したが脳Try, 5-HTは増加した。競合アミノ酸欠乏食群では, 血清総・遊離Try, 脳Try・5-HTが増加した。0.5% Try添加食でも同様な変化を示したが, 血漿のフェニルアラニンの低下がみられた。1/2競合アミノ酸食群では, 血漿総・遊離Try, 脳5-HTは変化せず, 血漿競合アミノ酸は減少し脳Tryが増加した。高脂肪食では, 血漿遊離Tryは増加したが, 血漿総Try, 脳Try・5-HTは変化せず血漿のフェニルアラニンが低下した。
相関をみると, 脳Try濃度と血漿遊離Try濃度との間では, 有意の相関は認められず, 血漿総Try濃度さらに血漿総Try濃度と競合アミノ酸濃度とを考え合わせたときの脳Try濃度との間には有意の相関が認められた。
以上の結果から, 脳Try・5-HTは血漿総TryとTryと脳吸収部位で競合するアミノ酸の血漿濃度によって影響されることが考えられた。しかも飼料のアミノ酸組成の変化が脳5-HT濃度に速やかにかつ複雑に影響を及ぼすことが示され, 日常の脳機能にも, 食物の影響が大きいことを推定できる。