日本栄養・食糧学会誌
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焙焼食品におけるタンパク質の消化性とアミノ酸残基のラセミ化
布施 眞里子早瀬 文孝加藤 博通
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1984 年 37 巻 4 号 p. 349-354

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抄録

牛肉, ベーコン, アーモンドおよびパンを150~250℃にて20分間焙焼し, これらの食品に含まれるタンパク質中のアミノ酸残基の破壊およびラセミ化について, また焙焼食品のin vitroでのタンパク質分解酵素による消化性の変化について検討した。
1) 焙焼食品中のアミノ酸残基は, 180℃以上の加熱において分解され, 高温になるほど分解が進行した。分解の激しいアミノ酸はセリン, スレオニンおよびアルギニンで, 250℃で40%以下となった。ついでチロシンとリジンも分解が激しかった。
2) アミノ酸残基のラセミ化は210℃以上で激しくおこり, ベーコン>牛肉>アーモンド>パンの順でラセミ化率が高かった。この順序から, 食品中のタンパク質と共存する脂質は, ラセミ化に対して促進的に働くことが推察された。
最もラセミ化率の高かったのはアスパラギン酸で, 250℃ではパン以外は77~86%であった。つぎがグルタミン酸で250℃では32~62%であった。
3) 焙焼食品のタンパク質分解酵素による消化性は, 焙焼温度が高くなるほど低下し, 180℃で50~85%, 210℃で10~45%, 250℃では8~20%になった。この消化性の低下は, アミノ酸の分解によるだけでなく, ラセミ化の影響もその原因として大きいと推察した。

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