日本栄養・食糧学会誌
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血漿エタノールレベルの日内変動に対する胃内容物の役割
in vivoレベルの検討
立屋敷 かおる今泉 和彦戸田 典子鷹股 亮上杉 公仁子荻田 善一
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1987 年 40 巻 1 号 p. 35-42

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抄録

無制限給餌 (水) 下で飼育したラットにエタノール (EtOH) を経口投与し, そのEtOH代謝に対する日内変動の有無を定量的に明らかにする目的で研究を行なった。そのため, 8: 00と20: 00にEtOHを投与し, その血漿EtOH濃度 (p [EtOH]) の経時変化を測定し解析した。また, EtOH投与前12時間にラットが摂取した餌と水の重量を測定し, これらの各量とp [EtOH] の関係をしらべた。さらに, p [EtOH] が消失した直後に, 胃内 [EtOH] と胃内容物重量を測定した。SpragueDawley系雌ラット (184±10g) を温度25±2℃, 湿度50~60%の条件で飼育し, 20: 00に消灯し, 8: 00に点灯するようにセットした。ラットにはEtOH投与直前まで任意に餌と水を与えた。投与EtOH量は100mg/100g体重 (20%EtOH溶液) とした。その結果, 以下の結論を得た。
1) 20: 00から8: 00まで (暗期) と8: 00から20: 00まで (明期) の摂餌量は, おのおの5.7±1.6, 1.6±0.7mg・g-1B.W. ・hr-1である。前者は後者の約3.6倍である。摂水量は暗期が明期に比べて約2.2倍大きい。したがって, ラットの摂餌量と摂水量はともに暗期が明期に比べて有意に大きい。
2) 20: 00にEtOHを投与して得られたp [EtOH] の最大値 (A), Aに達するまでの時間 (B), 血漿EtOHの消失時間 (C) および血漿EtOHの積分値 (D) は, 8: 00のEtOH投与で得られたA, B, C, Dの値に比べおのおの2.0, 1.5, 1.6, 3.2倍となり, 有意に高い。したがって, 無制限給餌下で飼育したラットのp [EtOH] の経時過程に, みかけ上の日内変動が明らかに認められる。しかし, EtOHの消失速度定数 (k) 値には暗期と明期で差がみられない。この現象が, 代謝レベルによるのか, または他の生理的特性と関係があるのかを明らかにするため, さらに解析した。
3) 肝細胞質内の肝ADH比活性値は, 8: 00と20: 00にEtOHを投与したグループとの間に有意な差が認められず, 日内変動はみられない。したがって, EtOH分解能は両群の間に差がない。
4) 胃内容物重量と胃内 [EtOH] から求めた胃内Et-OH残存率は, 8: 00投与の実験で25.8±10.7%, 20: 00投与の場合で0.3±0.4%である。前者が後者に比べて約86倍大きく, 日内変動が明らかにみられる。
5) p [EtOH] の経時過程から得られた各パラメータ (A~D) 値と胃内容物重量または胃内EtOH量との間には, 高い負の相関が認められ, ほぼ逆比例の関係が成立する。
以上の結果より, ラットのp [EtOH] の経時過程に著しい日内変動が認められるのは, 胃内容物量の多少により, 投与されたEtOHの胃内残存率が大きく変化し, 血漿へのEtOHの移行も大きく変動するためと推定できる。

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