日本栄養・食糧学会誌
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脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) の血圧, 脳ならびに末梢血管病変および寿命に及ぼすユーグレナ (Euglena gvacilis z) の影響
村上 哲男岡本 耕造北岡 正三郎飯塚 義富
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1988 年 41 巻 2 号 p. 115-125

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抄録

Euglenaの細胞 (Euglena gracilis z) をタンパク源にして調製した飼料を脳卒中易発症性高血圧自然発症ラット (SHRSP) に5週齢から投与して血圧, 脳卒中病変および血管病変の発生, 寿命への影響を調べた。SHRSPは系統により血圧の上昇の緩急や生存日数が異なるので血圧上昇が緩やかで寿命の長い系統 (グループI) と血圧上昇が急激で寿命の短い系統 (グループII) で検討した。得られた結果の概要は次のとおりである。
1. 5週齢からEuglena飼料を投与しても血圧上昇期の血圧を抑制する効果は認められなかった。しかし, グループIIでは10週齢以後の血圧は対照群よりやや緩やかであった。
2. 生存日数は対照群に比べてEuglena群では著しい延長が認められた。そして自然死したラットの脳卒中病変の発生率は, 対照群に比べやや低かった。また, 腎臓, 副腎における血管病変の発生も幾分か抑えられた。
3. 血管病変の進行程度を同一年齢で比較するためにグループIのSHRSPを35週齢時に屠殺して調べた。脳卒中病変および睾丸副腎における血管病変の発生割合は対照群に比しEuglena群では低かった。
4. Euglena飼料を投与した群の35週齢時の血漿レニン活性 (PRA) 値は対照群よりやや低値であった。
5. 大動脈の比体重は対照群に比べてEuglena群では有意に小さく, 血管壁の肥厚が抑制された。また, 大動脈エラスチンの加齢にともなう含有量の減少も抑制された。
6. 腸間膜動脈末梢部の電顕観察でもEuglena群は, 対照群に比し変化が少なく, 血管壁の基本構造がよく保持されていた。
7. 血清過酸化脂質は対照群では15週齢頃から増加したが, Euglena群では増加は抑制された。
以上の結果から, Euglena飼料では血圧の上昇抑制作用を示さないが, 血管壁を強化し脳卒中病変や血管病変の進行を遅延させた結果, 生存日数の延長をもたらしたものと考えられる。

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