日本栄養・食糧学会誌
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妊娠ラットにおける分離大豆タンパク質投与の影響
竹中 麻美水上 戴子堀川 蘭子
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1989 年 42 巻 1 号 p. 21-32

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抄録

妊娠ラットに10%SPI食を投与すると出産が非常に困難であったことから, 0.3% Met, あるいは0.15%Thr+0.2% Val+0.3% Metを添加することにより質の改善を, SPIレベルを20, 25, 35, 50%に上げることにより量的な改善を試みた。また, SPI 10%, 50%食を投与した場合のタンパク質利用効率, 血漿遊離アミノ酸, 胎仔, 胎盤等に及ぼす影響について妊娠前・中・後期に分けて観察し, これらの影響がいつごろ現れるかを10% WEP食と比較検討した。結果は次のとおりである。
1) SPI食群ではS50群を除いて, 妊娠19~20日ごろから飼料摂取量が著しく低下し, 体重が減少した。出産状況はタンパク質レベルが上がるにつれて改善の傾向がみられたが, W10群と同様に良好な出産状況と認められたのはS50群のみであった。
2) 妊娠前, 中期においては, タンパク質の利用効率 (BV), 胎仔・胎盤重量, 母体カーカス重量等に, 群間に差は認められなかった。妊娠後期にW10, S50群のBVが向上するのに対し, S10群では15~16日にW10群より有意に低くなり, 以後, 向上は認められなかった。血漿遊離アミノ酸濃度は, W10, S50群では21日において, 7, 14日に比べて低下したが, S10群では逆に上昇した。これは妊娠後期にS10群のアミノ酸の体内利用が悪く血漿中に残留したためと思われる。
3) 以上より, S10群で出産が非常に困難であったのは, 妊娠後期において, 10% SPI食のアミノ酸組成が母体と胎仔のアミノ酸必要量を充足することができず, タンパク質の利用効率が低下し, 摂食量が著しく減少したためと考えられる。したがって妊娠後期において, 10% SPI食のアミノ酸組成は母体の代謝亢進と胎仔の発育にとって不十分であると考えられる。SPI 10%レベルに制限アミノ酸を添加しても, 質の改善は認められなかったが, SPIの量を50%レベルまで上げることによって, 十分な改善が認められた。

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