日本栄養・食糧学会誌
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細管式等速電気泳動法による食品中のアントシアニンの分離同定
津田 淑江福場 博保
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1989 年 42 巻 1 号 p. 79-84

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抄録

天然色素の中で不安定な化合物の一つであり, 調理, 加工, 貯蔵中に変色して, その品質を劣化させる主要な原因となっているアントシアニンの分離同定に細管式等速電気泳動法を利用することを試み以下の結果を得た。
1) 島津細管式等速電気泳動I.P. -1BおよびI.P. -3Aを用いアントシアニン, アントシアニジンの分離定性を行った結果, リーディング液: 0.01N塩酸+0.5%トリトンX-100, ターミナル液: 0.01Nトリス, 定電流100μAで陽イオンとして泳動した場合シャープなピークとして分離できた。
しかし, 単体の場合はシャープなピークとして現れたが, デルフィニジン, シアニジン, ペラルゴニジンのPU値は非常に接近しており, 相互に分離することはできなかった。
2) 食品からのアントシアニン抽出法について検討を行い1%塩酸-メタノールを用いた場合にはH+量の増大からアントシアニンピーク出現がやや遅くなるが, 0.01%塩酸-メタノール液の場合と比較し泳動に大きな影響のないことが確かめられた。
3) アントシアニン類のように類似構造を有し, OH基の位置や数のみが異なる化合物を泳動するとき, リーディング液にアルミニウムを加え, 錯体効果を利用して移動度を変化させた場合の効果について検討を行った。その結果リーディング液: 0.01N水酸化ナトリウム+0.2%トリトンX-100+0.5mM塩化アルミニウム, ターミナル液: 0.01Nトリス, 定電流100μAで陽イオンとして泳動した場合これら化合物の移動度を変化させることができ, 相互分離が可能となることを確かめた。

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