日本栄養・食糧学会誌
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植物油脂の酸化生成物 (酸化酸) による油脂中のトコフェロールの分解とトコフェロールの分解に対する脂肪酸の促進効果
梶本 五郎吉田 弘美芝原 章
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1989 年 42 巻 4 号 p. 313-318

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抄録

180℃, 40時間加熱した大豆油, とうもろこし油, オリーブ油, やし油から得た酸化酸 (石油エーテル不溶性の酸化脂肪酸) と脂肪酸による大豆油のトコフェロールの分解について検討した。
1) 加熱による油脂のアニシジン価と酸化酸の生成割合は, 大豆油, とうもろこし油, オリーブ油, やし油の順に高く, 180℃, 40時間めの酸化酸の生成割合は大豆油で0.66%, オリーブ油で0.41%であった。一方, トコフェロール (Toc) の減少割合は, やし油が最も高く, ついで, オリーブ油, とうもろこし油, 大豆油の順であった。
2) 硬化度の異なるなたね油の加熱によるアニシジン価と酸化酸の生成割合はなたね油のほうが高い。Tocの分解は硬化なたね油のほうが大きく, 硬化なたね油II (I.V 70.9) の場合, 加熱10時間でTocは完全に分解した。
3) 酸化酸添加大豆油中のTocは加熱により急減した。なかでも大豆油酸化酸を添加した場合で, 10時間目のTocの残存率は28.0% (対照大豆油で88.0%), ついで, とうもろこし油, オリーブ油, やし油の各酸化酸添加の順で, それぞれのTocの残存率は30.0, 35.0および38.0%であった。
4) 60℃, 保存時の大豆油中のTocも添加した酸化酸により著減した。Tocの分解率は大豆油酸化酸を添加した群が最も高く, ついで, とうもろこし油, オリーブ油, やし油の各酸化酸添加の順であった。
5) 加熱による油脂の酸価の増加割合は, やし油, オリーブ油で高く, 40時間目の酸価は7.1および5.9であった。大豆油, とうもろこし油の酸価は低く, 40時間目で0.95および0.65であった。
6) オレイン酸添加大豆油を180℃で加熱した場合, 油脂中のTocの分解は, 無添加油のそれよりも多くなった。酸化酸とオレイン酸の併用添加は, それぞれの単一添加時よりも油脂中のTocの分解は多く, かつ, オレイン酸の添加量が増すにしたがい, Tocの分解率は増加した。
7) 酸化酸による大豆油中のTocの分解に対するステアリン酸, リノール酸, リノレン酸の効果は, オレイン酸の効果と類似していた。
油脂中のTocの分解に油脂の酸化生成物である酸化酸, ならびに遊離脂肪酸が関与していることがわかった。

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