日本栄養・食糧学会誌
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各種脂肪酸とそのメチルエステル中におけるトコフェロールの熱分解に及ぼす没食子酸とチオジプロピオン酸の影響
梶本 五郎吉田 弘美芝原 章
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1990 年 43 巻 2 号 p. 139-145

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抄録

炭素数および不飽和度の異なる脂肪酸とそれらのメチルエステル, ならびにモノおよびトリオレインにトコフェロール (Toc) を添加し, 180℃加熱によるTocの分解について検討した。
1) 飽和脂肪酸メチルでは, 炭素数が大きくなるに従いTocの分解率は高く, 加熱3時間後のステアリン酸メチルでTocの残存率は12%, ラウリン酸メチル, カプリル酸メチルで50および95%であった。アニシジン価, カルボニル価はいずれも低値で, 概して炭素数が大きくなるに従いカルボニル価はわずかに高くなった。
2) 炭素数18の不飽和脂肪酸では, 不飽和度の低いオレイン酸中でのTocの分解が最も高く, 加熱2時間後のTocの残存率3%, ついで, リノール酸, リノレン酸の順で17および20%であった。アニシジン価, カルボニル価はリノレン酸が最も高く, ついで, リノール酸, オレイン酸の順であった。したがって, Tocの分解は三者中, 酸化度の最も低いオレイン酸中で最も高かった。
3) オレイン酸, モノおよびトリオレインでは, Tocの残存率はオレイン酸で最も低く, モノオレインで高かった。アニシジン価, カルボニル価はモノオレインが最も低く, オレイン酸は両値とも高かった。
4) 飽和脂肪酸中のTocは加熱に伴い減少し, Tocの酸化生成物 (Toc単量体以外のHPLCのピーク物質) の割合は逆に増加した。ことにTocの分解の多いステアリン酸メチルでTocの酸化生成物の割合は高かった。不飽和脂肪酸メチルでは, オレイン酸メチル中でTocの酸化生成物の生成割合が最も高く, ついで, リノール酸メチル, リノレン酸メチルの順であった。
5) ステアリン酸メチル, オレイン酸メチル中のTocの熱分解は, 没食子酸およびチオジプロピオン酸の添加で防止できた。オレイン酸メチルの場合, 加熱5時間後のTocの残存率20%に対し, 没食子酸0.05%添加では98%であった。また, Tocの酸化生成物も生成しなかった。

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