日本栄養・食糧学会誌
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酵素-重量法による総食物繊維定量法の改良
矢野 誠二石渡 比奈子奥田 祥子小谷 忠男辻 啓介
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1990 年 43 巻 3 号 p. 209-214

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抄録
AOAC法 (Proskyの酵素-重量法) によるTDF定量法の新改良法を提案した。本改良法では, 入手しやすく, 安価な代替酵素を使用し, 前処理としてのデンプンの糊化にはターマミルを使用する代りに超音波と電子レンジ処理ならびに圧力鍋加熱による軟化を試みた。もう一つのおもな改良は, リン酸塩緩衝液に代えてトリス緩衝液 (トリスーマレイン酸水酸化ナトリウム緩衝液) を用いたところ, 分析値の再現性が高まった。また両方法において, 超音波浴を使って試料を緩衝液中に均一に分散させることでTDF値の再現性がより高められた。分析した8種の植物食品の試料においては, リン酸塩緩衝液のほうが残渣中のリンとミネラルの量が多かった。その理由として, 緩衝液中のリン酸がその他のミネラルと反応して酵素や試料に取り込まれ, アルコール中に沈殿してくることが推定された。またペクチン, グアガム, カラゲナン, セルロースでの本改良法における酵素剤による過剰な分解は認められなかった。DFを多く含む10種の食品についてこの改良法で求めたTDFはAOAC法によるものとよく一致した。
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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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