日本栄養・食糧学会誌
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油脂の酸化生成物 (酸化酸) によるトコフェロールの分解に及ぼす没食子酸および大豆レシチンの効果
梶本 五郎嘉ノ海 有紀吉田 弘美芝原 章
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1990 年 43 巻 4 号 p. 281-286

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抄録

トコフェロールの熱分解に対する没食子酸および大豆レシチンの防止機構について検討した。
1) 没食子酸および大豆レシチン添加大豆油, 硬化なたね油, オリーブ油およびオレイン酸メチルの熱酸化度は, 没食子酸や大豆レシチン無添加油に比べてわずかに低い程度であった。一方, トコフェロールの残存率は添加油で著しく高い。
2) 油脂中のトコフェロールは油脂の酸化生成物である酸化酸 (石油エーテル不溶性の酸化脂肪酸) によって容易に分解をうけた。酸化酸によるトコフェロールの分解は没食子酸や大豆レシチンの添加で防止できた。
3) トコフェロール添加オレイン酸メチルを加熱することにより, その二量体が得られた。
4) 油脂および各トコフェロール添加オレイン酸メチルを加熱し, それぞれのトコフェロールを完全に消失させた後, 没食子酸および大豆レシチンを添加して再度加熱した。加熱に伴いもとのトコフェロールと思われるピーク (HPLC) があらわれた。これらピークの相対保持時間, Rf値, 極大吸収などは標準のトコフェロールのそれらと一致した。
トゴフエロール単量体ヘの再生率はα-トコフェロールが最も高く, ついで, δ-およびγ-トコフェロールの順であった。
5) トコフェロールの酸化生成物である二量俸, トコレッド, トコフェリルキノンからは没食子酸および大豆レシチンによってももとのトコフェロールには再生されなかった。
トコフェロールの熱分解に対する没食子酸および大豆レシチンの作用は, 油脂の酸化生成物である酸化酸に反応し複合体を形成することにより, 酸化酸によるトコフェロールの分解力を低下させる作用が最も大きいと考えられた。

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