日本栄養・食糧学会誌
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経産ラットのカルシウム, リンおよびマグネシウム出納に及ぼす飼料中カゼインまたは分離大豆タンパク質レベルの影響
阿左美 章治平塚 静子北野 隆雄江指 隆年
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1990 年 43 巻 6 号 p. 427-435

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抄録

生後5カ月齢のフィッシャー系経産ラットにカゼインまたは分離大豆タンパク質の2種類をタンパク質源とし, その含有量をそれぞれ20%と40%とした飼料すなわち20%カゼイン食 (C20), 40%カゼイン食 (C40), 20%分離大豆タンパク質食 (S20), 40%分離大豆タンパク質食 (S40) を16週間与え, その間6, 11, 16週間目にそれぞれカルシウム (Ca), リン (P), マグネシウム (Mg) の出納実験を行った。また, 16週目実験終了時における血清, 大腿骨, 腎臓中のCa, P, Mg量におよぼす飼料タンパク質の影響について調べた。さらにCa尿中排泄量と血清PTH量の関連についても検討した。
結果は以下のとおりであった。1) C40のCaとPの尿中排泄率はともに他の3群に対してつねに高値を示した。しかし出納は負を示さなかった。またC40のCaの尿中排泄率は加齢にかかわらず高排泄を持続する特徴を示した。
2) C40のCa体内保留率はS40より低く, Ca代謝におよぼすマイナス効果はC40が大きい傾向であった。
3) C40のMgの尿中排泄率および体内保留率は他の群間と有意の差を認めなかった。
4) 大腿骨重量, 脱脂骨重量, 骨中灰分量および脱脂大腿骨1g当りのCa, P, Mg量, 骨中Ca/P比には各群間に差を認めなかった。
5) C40, S40の腎臓はC20, S20より重く, C40の腎臓1g当りに換算したCa量は各群中もっとも低値であった。
6) 40%タンパク質食群の血清PTH量が高値傾向を示すことからCa保持に関する機能の亢進が考えられた。
以上の結果から, タンパク質の過剰摂取はCa代謝にとって危険因子となりうる可能性が推定された。

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