日本栄養・食糧学会誌
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ヨーグルトおよびビフィズス発酵乳がマウスの生存率と血清成分値に及ぼす影響
鈴木 豊海津 浩美山内 吉彦中里 溥志
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1991 年 44 巻 3 号 p. 177-182

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抄録

発酵乳を市販飼料に添加し, マウスに長期間自由摂取させ, 平均生存率に及ぼす影響を検討した。実験は2回繰り返した。
1回目の試験では市販飼料およびこれに脱脂粉乳を添加した飼料を対照として, ヨーグルト (L. delbrueckiisubsp. bulgaricus SBT0098, S. salivarius subsp. thermophilus SBT1014) の効果について検討した。マウスを121週齢まで飼育し, 平均生存時間を求めた結果, 対照群が77週齢, 脱脂乳群が83週齢, 生菌ヨーグルト群が89週齢, 殺菌ヨーグルト群が86週齢となり, ヨーグルト群の平均生存時間が市販飼料を摂取した対照群や, 脱脂乳群に比べ長かった。そこでヨーグルトのこの効果を再確認し, 合わせて種々の生理効果が注目されているビフィズス発酵乳 (B. longum SBT2933R) の効果を検討するため, 2回目の試験を実施した。
市販飼料に脱脂粉乳を5%添加したものを対照とし, ヨーグルトおよびビフィズス発酵乳を5%添加したものを試験飼料として, 97週齢まで飼育した。その間, 死したマウスを解剖し, 病態や死因を調べた。また飼育終了時に生存していたマウスの血清成分値を測定した。
97週齢における生存率は, 脱脂乳群で52.5%, ヨーグルト群で65%, ビフィズス群で67.5%となった。脱脂乳群とヨーグルト群との間には, p=0.67 (Wilcoxon検定) およびp=0.11 (Log-Rank検定) の有意確率で差があり, ビフィズス群との間には, おのおのp=0.095およびp=0.10の有意確率で差があった。また解剖所見の結果をXX2検定すると, 3群間に有意差 (p<0.05) が認められ, ビフィズス群では, 老齢期においてもマウスを正常に維持する効果があるものと推察した。さらに血清成分値の測定結果から, 腎機能の指標となる尿素窒素, 尿酸およびクレアチニンに有意差が認められ, 発酵乳の投与が, 糖および脂質代謝の改善にも効果をもたらす可能性が示唆された。
以上のことから, マウスに発酵乳を投与すると平均生存率が高まり, この現象は, これらの発酵乳のもつ種々の効果が, 疾病に対し抑制的に作用した結果による可能性があり, とくにビフィズス発酵乳で顕著であると推測した。

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