日本栄養・食糧学会誌
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幼児 (3~6歳児) の安静時代謝量の実態ならびに1日のエネルギー摂取量と消費量に関する研究
山口 蒼生子
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1993 年 46 巻 4 号 p. 287-297

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抄録

幼児の健全な成長・発育を促し, 肥満を予防するための栄養所要量と運動所要量についての基礎資料を得る目的で, 1990年6月から1991年6月までの間, 健康で発育に問題のない幼児188名 (エネルギーバランスについては118名) について安静椅座位代謝量ならびに1日の食物摂取状況調査と生活時間調査を実施し, 次のような知見を得た。
1) Vo2RQから算出したエネルギー消費量 (kcal/kg/min) は3歳児を除き男児で女児より高い傾向を示した。
2) 推定基礎代謝量は5歳男児と3歳女児を除き, 男児では3歳児11.4%, 4歳児14.4%, 6歳児2.1%, 女児では4歳児15.1%, 5歳児7.9%, 6歳児18.3%「栄養所要量」1) より低かった。
3) 推定基礎代謝量と1日のエネルギー消費量 (生活時間調査による) から算出した生活活動度は生活活動強度II (中等度) に該当し, 男児では年齢の長ずるに従い大きくなる傾向がみられ, 女児も3歳児を除くと男児と同様の傾向にあり, 女児の生活活動度は男児より低い傾向を示した。
4) エネルギー消費量と摂取量のバランスをみると, エネルギーの摂取過剰を示す児では生活活動が低く, 摂取不足の児では高かった。
5) 日常行動が活発な児やBMIが大きい児のエネルギー必要量は大であった。また, 日常行動が不活発な児のエネルギー消費量は摂取量や必要量より約200 kcal少なく, 不活発な児の身体活動量を多くする配慮が必要である。
6) エネルギー摂取量と消費量は男児ではほぼ一致しているが, 女児ではエネルギー摂取量が消費量より若干高い傾向にあった。
園児1日のエネルギー必要量ならびに摂取量と消費量について「栄養所要量」1) に記載されたエネルギー所要量と比較した結果, 得られた数値はいずれも低値であった。とくに4歳児の低値が顕著であった。この原因は推定基礎代謝量の低値と体位にあった。しかし, 本調査対象園児の3歳児と6歳児の例数が少ないので今後さらに検討する必要がある。

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© 社団法人日本栄養・食糧学会
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