日本栄養・食糧学会誌
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食餌性プロリンの急性欠如がラットの腎アミノ酸代謝に及ぼす影響
渡辺 貢杉村 敬一郎山之端 万里
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1995 年 48 巻 4 号 p. 277-282

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抄録

プロリン欠如食餌をラットに給与し, 絶食時のラットに認められる低レベルの血漿プロリン濃度を生じさせた。その状態の血漿アミノ酸濃度と腎静脈血流量を測定し, 腎でのアミノ酸代謝の動態を検討した。
1) プロリン欠如食餌の摂食後8時間でプロリン欠如食餌区の頸動脈血漿プロリン濃度は, 対照食餌区より顕著に有意に低い値を示し, これは対照区の絶食時でのプロリン濃度と同レベルの低濃度であった。
プロリンの動脈腎静脈差の結果より, 摂食後8および16時間で, 対照食餌区においては腎でのプロリンの取込みが示され, プロリン欠如食餌区ではプロリンの放出が明らかになった。
2) 8時間でのアルギニンの動脈腎静脈差と腎における正味のアルギニン放出量の結果より, プロリン欠如食餌区の腎からのアルギニン放出量は対照食餌区より有意に低い値を示した。16時間でのプロリン欠如食餌区の血漿アルギニン濃度は, 対照食餌区より有意に低い値を示した。また, 頸動脈血漿プロリン濃度とアルギニンの動脈腎静脈差との間で, 有意に高い負の相関係数が明らかになった。
以上の結果より, 血漿プロリン濃度が絶食時と同レベルの低い値の場合は腎からのプロリンの放出が認められ, 腎のプロリン供給臓器としての機能が示された。また, 食餌性プロリン欠如により, 動物の成長に重要なアミノ酸として知られるアルギニンの腎からの放出量の低下を一過性で誘発するこ, とが示され, 血漿アルギニン濃度の低下を招くことが示唆された。これは摂食後8時間で顕著に現れた。

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