日本栄養・食糧学会誌
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高血圧自然発症ラットにおける小麦フスマヘミセルロースの血圧上昇抑制効果
児玉 俊明椎葉 究辻 啓介
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1996 年 49 巻 2 号 p. 101-105

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抄録

小麦フスマ水溶性ヘミセルロース (WSH) から, 構造の異なる2種のアラビノキシラン (FA, FB) を分離調製した後, それぞれの成分の血圧上昇抑制効果を自然発症高血圧ラット (SHR) を用いて測定し, 血圧上昇抑制効果を有するヘミセルロース成分の構造およびその性質について検討した。FAは, WSH溶液の50%エタノール沈澱物として得られた。一方, FBは, WSHをセルラーゼオノズカによる酵素処理後, 限外濾過膜分離して, その高分子成分として得られた。陰イオン交換体DEAEカラムにより, FAはアラビノース側鎖の少ないアラビノキシランAX-1に, また, FBは, アラビノース側鎖が多く, タンパク質やウロン酸を含む陽イオン交換体を有するアラビノキシランAX-2に相当することがわかった。これらWSH, FA, FBをアラビノキシラン量で3%になるように試験食に配合した飼料をSHRに与えた。その結果, とくにFB配合試験区で, FA摂食試験区やコントロール区 (ヘミセルロース無配合区) に比べて, 有意に血圧上昇抑制効果が認められた。また, それぞれの試験食で飼育したSHRの糞便量は, コントロール区と比較して全ヘミセルロース試験区で増加したが, 糞便中のナトリウム量は, FB摂食区で最も高く, FA摂食区ではコントロールと差がなかった。また, WSH摂食区では, その中間の値を示したことから, WSH中に含まれるAX-2の量に比例してナトリウムが, 排泄される傾向にあり, 血圧上昇抑制効果との因果性が示唆された。以上の結果から, WSH中, AX-2成分に血圧上昇抑制効果があり, それは, AX-2のナトリウム排泄促進効果によることが示唆された。また, その理由として, AX-2に含まれるウロン酸および/またはタンパク質の陽イオン交換作用による腸管内でのナトリウムイオン吸着と, アラビノース側鎖の多い構造をもつ難分解性食物繊維による排泄促進効果による複合的作用が考えられた。

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