日本栄養・食糧学会誌
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乳腐製造工程における脂質成分の変化について
徳江 千代子片岡 栄子
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1997 年 50 巻 2 号 p. 139-145

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抄録

乳腐製造工程において最も物性や風味形成に関与すると考えられる脂質成分の変化について明らかにした。
1) 乳腐熟成中の脂質の化学的特性は, IVは120~131, SVは199前後であまり変化なく両方とも大豆油の範囲内であった。AV, POVは熟成中に増加したが乳腐では低下した。
2) 乳腐熟成中の脂質組成は, NLが90.4~92.9%, GLが4.1~5.3%およびPLが3.0~4.3%であった。
3) 乳腐熟成中のNLについては90%以上含まれていたTGがカビ豆腐で1/2, 乳腐で1/4に減少した。PLではPC, PE, PIで約70%を占め, これらにより中性脂質-タンパク質の乳化・分散が起こり, 乳腐独特のチーズ様物性と食感を付与していると考えられる。
4) 乳腐熟成中のTL, NL, GLおよびPLの主要な構成脂肪酸は18: 2, 18: 1, 16: 0であり, GLおよびPLでは熟成の進行により不飽和脂肪酸が減少し飽和酸が増加した。
5) 不ケン化物成分として乳腐にはγ-, δ-トコフェロールなどの抗酸化性をもつものが多く含まれており, さらに血中コレステロールを低下させる大豆中のβ-シトステロールも乳腐に多量に含まれていることなどから栄養学的にも意義ある食品であることが認められた。

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