日本栄養・食糧学会誌
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乳清タンパク質加水分解物を用いた経腸栄養剤のラットにおけるインドメタシン潰瘍予防効果
上田 善継坂田 文子渡沼 稔早澤 宏紀宮川 博越智 浩中崎 久雄
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2001 年 54 巻 3 号 p. 161-169

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抄録

乳清タンパク質加水分解物を用いた試作栄養剤 (WPH群) が, インドメタシン (IND) 潰瘍に及ぼす影響について検討するために, 窒素源が異なる市販栄養剤2種 (エレンタール (ED群) およびエンシュアリキッド (ME群)) を対照に二つの実験を行った。実験1: SD系雄性ラット (n=6-7) に対して, 3種の栄養剤を9日間持続投与し, 6日目および7日目にINDを皮下投与した。その結果, 小腸において, WPH群では7匹中1匹 (14%) のみに潰瘍が認められたのに対して, ED群では6匹中4匹 (67%), ME群では7匹中6匹 (86%) と高率に潰瘍が発生した。また, WPH群は他の2群よりも潰瘍数も少なく, WPH群では明らかに潰瘍が抑制されていた. 実験2: IND投与前後でWPHとEDを交換してWPH-WPH群, WPH-ED群, ED-WPH群およびED-ED群の4群 (n=7-8) を設定し, 誘発される消化管潰瘍を比較検討した。その結果, 小腸と盲腸の潰瘍発生率はそれぞれ, WPH-WPH群で14%と14%, WPH-ED群で13%と25%, ED-WPH群で86%と100%, ならびにED-ED群で71%と100%であった。潰瘍数も, WPH-WPH群とWPH-ED群がED-WPH群とED-ED群に比べ明らかに少なかった。このことから, WPHの抗IND潰瘍作用は予防効果であることが示唆された。これら二つの実験から, 窒素源として乳清タンパク質加水分解物を用いた経腸栄養剤WPHには, IND潰瘍の発生を抑制する効果があることが示された。

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