日本栄養・食糧学会誌
Online ISSN : 1883-2849
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高感度グルコース測定系を応用したラット初代培養肝細胞からのグルコース放出の定量化
グルカゴンによるグルコース放出促進に対するインスリン抑制の急性効果と phosphatidylinositol 3-kinase 活性化の関与
田中 利明染谷 至紀今泉 美佳勝田 秀紀小澤 幸彦山口 真哉吉元 勝彦松村 英生永松 信哉石田 均
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2004 年 57 巻 1 号 p. 1-7

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抄録

肝細胞の細胞レベルにおけるグルコース放出調節機構を検討する目的で, 酵素固定化カラムと電気化学検出器を組み合わせた, グルコース特異的かつ, 高感度で, 測定手技が簡便な高感度微量測定系を作成し, ラット初代培養肝細胞系と組み合わせた新たな実験系を確立した。本測定系での最小測定濃度は10nMであり, その測定の変動係数は1.9%と, 再現性は良好であった。この系を用いたところ, 初代培養肝細胞からのグルコース放出は, 10-12~10-8Mまでのグルカゴン刺激により濃度依存性に増加した。10-9Mのグルカゴンの存在下に10-12Mから10-5Mのインスリンを負荷したところ, グルコース放出は1時間以内にインスリンの濃度依存性に抑制された。次に10-7Mのインスリン存在下に, phosphatidylinositol 3-kinase 阻害剤の wortmannin とLY294002をそれぞれ添加したところ, いずれも濃度依存性にグルカゴン刺激下のグルコース放出に対するインスリンの抑制を阻害した。以上より, 肝細胞におけるインスリンの急性作用の少なくとも一部には, phosphatidylinositol 3-kinase の活性化を介したリン酸化カスケードが関与しているものと考えられた。

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