抄録
30年間に, 先天性代謝異常症の診療研究, カルシウム・リン・ビタミンD代謝異常の診療研究および慢性肝疾患の臨床栄養管理について研究を行った。先天性代謝異常症では, 100%発症する疾患に対して食事療法は発症の予防や治療に有効であることを確認した。カルシウム・リン・ビタミンD研究では, カルシウムの必要量は遺伝因子によって異なることから, 個人の遺伝的背景を理解したうえで積極的に骨粗鬆症を予防する栄養管理を実践することが必要である。一方, リンはエネルギー産生や骨形成に必要であるが, 近年の日本ではリン摂取過剰が考えられる。リンの過剰は副甲状腺ホルモン分泌を促進するので注意が重要である。肝硬変では栄養不良とともに耐糖能障害がみられることから, 少量頻回食が有効と考えられる。慢性肝疾患患者のQOL保持あるいは改善のために臨床栄養管理が重要である。