抄録
本研究は中小企業M&Aにおける仲介業者と買い手企業、売り手企業の行動を分析したものである。分析にあたり、まず、M&A仲介業者の状況を概観した。次に、3プレイヤーのゲームのモデルを設定し、そのモデルを解いた。このモデル分析によって、ナッシュ均衡は、均衡が唯一のケース、複数均衡と混合戦略ナッシュ均衡が存在するケース、があることがわかった。また、均衡が唯一であるケースではM&Aが成立すること、混合戦略のあるケースでは交渉が破談しうることがわかった。また、中小M&Aガイドライン改訂の効果は、①M&A仲介業者が高価格を提案して買い手企業が値下げをおこない、売り手企業が納得するナッシュ均衡と②M&A仲介業者が高価格を提案して買い手企業が交渉に納得し、売り手企業が値上げをおこなうナッシュ均衡、③買い手企業と売り手企業がそれぞれの戦略を確率的に選択する混合戦略ナッシュ均衡が実現しやすくなるというものであった。
キーワード:中小企業M&A、M&A仲介業者、買い手企業、売り手企業、3プレイヤーゲーム理論