近年,高齢者や障害者を対象とした支援システムの開発が進んでおり,中でも人間の視線を利用したインタフェースの研究が注目を集めている.人間の視覚には,多くの重要な情報が含まれており,その視覚情報を用いて操縦者が次にどのような行動をとりたいのかを推定する研究が報告されている.例えば,人間の視線から意図を推定するために用いる手段の1つに,視覚的顕著性マップモデルがある.このモデルは,画像の中から人間の注意が向けられやすい場所を推定することができ,入力が画像情報のみという利点を持つ.視覚的顕著性マップモデルを扱っている研究として,操縦者の頭部の動きから変化する顕著性マップの値を抑制する研究,人間の知識を顕著性マップの重みに利用して調節する研究などが報告されている.そこで本研究では,視覚的顕著性マップと視線情報の組み合わせに着目し,人間の目の動きとその人が見ている風景から生成された行動意図推定マップを抽出し,全方向車椅子を走行制御するための視線教示システムを提案する.このシステムでは,複数の入力情報から人間の経験を基に総合的な判断ができるファジィ推論を取り入れることで,人間が見ている場所を意図推定することができる.本手法の有効性を示すために,視線だけを用いた視線教示システムとの比較実験を行った.